賃貸マンションやアパートで、ある日突然トイレが故障した時、その焦りと不便さは計り知れません。しかし、パニックになって誤った行動を取ると、被害を拡大させたり、後々の費用負担でトラブルになったりする可能性があります。緊急時にこそ、冷静な応急処置と、賃貸物件ならではの「絶対ルール」を守ることが重要です。まず、トイレの故障が「水漏れ」や「水が止まらない」といった、水が溢れ出す危険性のあるトラブルの場合、何よりも最優先で行うべきは「止水栓を閉める」ことです。止水栓は、トイレタンク横の壁や床から伸びる給水管の途中にあり、ハンドル式またはドライバー式です。時計回りに回して、水の供給を断ってください。もし、止水栓自体から水が漏れている、あるいは固くて回らない場合は、さらに大元の、玄関横のパイプスペースなどにある「水道の元栓」を閉めます。次に、床にこぼれた水を、雑巾やバスタオルで徹底的に拭き取ります。これは、階下の部屋への水漏れ被害を防ぐための、極めて重要な作業です。一方、故障が「詰まり」や「水が流れない」といった、水が溢れる危険性が低いトラブルの場合は、無理に何度もレバーを操作したり、自己流で修理を試みたりするのはやめましょう。状況を悪化させる可能性があります。そして、ここからが賃貸物件における最も重要な「絶対ルール」です。それは、「どんな故障であれ、自分で修理業者を呼ばず、まず最初に管理会社または大家さんに連絡する」ということです。賃貸物件の設備の所有権と修理責任は、原則として大家さんにあります。管理会社は、提携している指定の水道業者を手配するのが一般的です。もし、この手順を無視して勝手に業者を呼んでしまうと、修理費用を全額自己負担しなければならなくなる可能性が非常に高いです。緊急時こそ、まず応急処置で被害の拡大を防ぎ、次に必ず管理会社へ連絡する。この冷静な手順が、あなたの財産と、大家さんとの良好な関係を守るための、唯一にして最善の方法なのです。