「シャワーホースの水漏れなんて、誰でも直せると思われがちですが、実は奥が深いんですよ」と、現場歴二十年のベテラン水道修理職人は苦笑いしながら語り始めました。彼が日々遭遇する修理依頼の中で、シャワー関連のトラブルは常に上位を占めています。彼によれば、最も多いのは「自分で直そうとして事態を悪化させてしまった」というケースだそうです。最近はインターネットで修理方法が簡単に調べられるため、自分でパッキンを交換したりホースを付け替えたりする人が増えていますが、そこで落とし穴となるのが、メーカーごとの規格の微妙な違いです。たとえば、TOTO、リクシル、KVK、MYMといった国内主要メーカーは、それぞれネジのピッチやパッキンの形状が微妙に異なり、適合しない部品を無理に締め込むことで、蛇口本体側のネジ山を潰してしまうことがあるのです。こうなると、ホース一本の交換で済むはずだった話が、混合栓本体の全交換という数万円の出費に化けてしまいます。職人が現場で行う「目利き」は、単に水漏れを止めることだけではありません。彼はまず、水圧を測定し、その家庭の給湯システムがシャワーホースにどれだけの負荷をかけているかを見極めます。高台にある住宅や、強力なブースターポンプを設置しているマンションでは、市販の安価なホースではすぐに耐圧限界を超えてしまうため、あえて補強入りのハードタイプを提案することもあります。また、ホースから水漏れしている際、彼はホースだけを見るのではなく、シャワーヘッドの散水穴もチェックします。長年の使用で穴がカルシウム分で目詰まりしていると、内部で異常な背圧がかかり、ホースの最も弱い部分から水が漏れ出す原因になるからです。ヘッドの掃除だけで水漏れが止まることもあれば、根本的な解決のためにヘッドとホースをセットで交換することを勧めることもあります。職人の知恵として彼が強調するのは「シールテープに頼りすぎないこと」です。DIYをする人の多くが、ネジの部分に白いシールテープを厚く巻けば漏れないと思い込んでいますが、シャワーホースの接続の基本はパッキンによる面接触での止水です。余計なテープはパッキンの密着を邪魔し、逆に漏水の原因になることさえあります。さらに、ホースの素材選びについても一家言あります。冬場の浴室が冷え込む日本の住宅では、硬くなりやすい安価な樹脂製よりも、柔軟性を保つシリコン素材や、絡まりを防ぐ回転金具付きの製品を選ぶことが、結局は次の水漏れを五年先、十年先へ延ばす賢い選択になると助言します。プロの仕事とは、ただ目の前の水を止めることではなく、その家の水回りの将来を予測し、最もストレスの少ない状態を長く維持することなのです。
水道修理職人が語るシャワーホース水漏れの現場と知恵