賃貸物件でトイレが故障した際、一刻も早く直したいという焦りから、インターネットで検索して見つけた水道業者に、つい電話をかけてしまいそうになるかもしれません。しかし、その行動は、後で必ず後悔することになる、賃貸契約における最大のタブーの一つです。賃貸物件のトラブル対応には、「まず管理会社・大家さんに連絡する」という、絶対に破ってはならない掟が存在します。なぜ、自分で業者を呼んではいけないのでしょうか。その理由は、主に「費用負担のトラブル」と「責任の所在」にあります。まず、最大の理由が「修理費用の負担」です。トイレの故障が、設備の経年劣化による自然なものであった場合、その修理費用は、民法の定めにより、原則として貸主である大家さんの負担となります。しかし、入居者が管理会社の許可なく勝手に業者を手配してしまうと、大家さんはその費用の支払いを拒否することができます。その結果、本来は大家さんが支払うべきだったはずの修理費用を、全額自分で支払わなければならなくなるのです。大家さんや管理会社は、特定の水道業者と提携し、通常よりも安価な料金で修理を依頼できる契約を結んでいることがほとんどです。あなたが個人で依頼した業者の料金が、その相場よりも高額であった場合、その差額を負担してもらうことは極めて困難でしょう。次に、「建物の管理責任」の問題があります。水道設備の修理は、時に建物全体に関わる問題に発展することがあります。あなたが呼んだ業者の作業が原因で、他の部屋にまで被害が及んだり、建物の主要な配管を傷つけてしまったりした場合、その責任は非常に複雑になります。管理会社は、建物の構造を熟知した、信頼できる指定業者に作業を依頼することで、そのようなリスクを管理しているのです。緊急性が高く、管理会社と全く連絡が取れないといった、よほどの事情がない限り、自己判断で業者を呼ぶ行為は「百害あって一利なし」です。トイレの故障は、確かに不便でストレスフルな出来事ですが、その焦りが、数万円という無用な出費と、大家さんとの信頼関係の損失に繋がるということを、肝に銘じておく必要があります。
トイレ故障、勝手に業者を呼ぶのがNGな理由