賃貸物件のトイレで、レバーを操作しても水が流れない、あるいは、逆にいつまでもチョロチョロと水が流れ続け、止まらない。このような「タンク内部」が原因と思われる故障は、入居者にとって非常にストレスですが、費用負担の観点から見れば、比較的安心できるトラブルと言えます。なぜなら、これらの故障のほとんどは、部品の「経年劣化」が原因であり、その修理・交換費用は、原則として「大家さん(貸主)」の負担となるケースが圧倒的に多いからです。トイレのタンクの内部には、ボールタップ、浮き球、フロートバルブ、洗浄レバーといった、複数の機械部品が複雑に連動し、給水と排水をコントロールしています。これらの部品は、プラスチックやゴム、金属でできており、常に水に浸かっているという過酷な環境下で、毎日何度も作動しています。そのため、長年の使用によって、摩耗したり、硬化したり、破損したりといった経年劣化は、避けることができません。一般的に、これらのタンク内部品の寿命は、おおよそ10年が目安とされています。「水が流れない」という症状の多くは、レバーと排水弁を繋ぐ鎖が切れたり、ボールタップが固着して給水されなくなったりといった、部品の寿命が原因です。「水が止まらない」という症状もまた、排水弁であるフロートバルブのゴムが劣化して隙間ができたり、ボールタップのパッキンが摩耗して弁が完全に閉じなくなったりすることが原因です。これらは、入居者が通常の使い方をしている限り、その責任を問われることはまずありません。入居者の過失が原因となるケースとしては、例えば、「節水のためにタンク内にペットボトルや瓶を入れており、それが引っかかって部品を破損させた」「芳香洗浄剤などをタンク内に直接投入し、それが原因で部品が劣化した」といった、通常の使用方法から逸脱した行為があった場合です。しかし、そのような特殊なケースを除けば、タンク内部の自然故障は、大家さんが負うべき「設備の維持管理責任」の範囲内です。トラブルに気づいたら、ためらわずに管理会社や大家さんに連絡し、状況を詳しく説明しましょう。多くの場合、大家さん側の費用負担で、速やかに修理または部品交換の手配をしてもらえるはずです。
賃貸トイレのタンク故障は大家さん負担?