今や日本の賃貸物件では標準設備となりつつあるウォシュレット。しかし、この快適な設備もまた、電気と水を扱う精密な家電製品であり、いつかは故障の時を迎えます。賃貸物件に備え付けのウォシュレットが、「水が出ない」「水が止まらない」「便座が温まらない」といった故障を起こした場合、その修理や交換の責任と費用は、一体誰が負うのでしょうか。まず、大原則として、そのウォシュレットが「入居時から設置されていた備え付けの設備」である場合、その経年劣化による自然故障の修理・交換費用は、「大家さん(貸主)」の負担となります。ウォシュレットの寿命は、一般的に7年から10年とされており、長年の使用によって電子基板やバルブ、ヒーターといった内部部品が故障するのは、自然なことです。これは、エアコンや給湯器が故障した場合と同様に、大家さんが負うべき「設備の維持管理義務」の範囲内です。入居者の過失が原因となるのは、例えば、「物をぶつけて本体を破損させた」「不適切な洗剤を使って掃除し、ノズルや基板を故障させた」といった、通常の使用方法から逸脱したケースに限られます。一方で、そのウォシュ-レットが、元々は設置されておらず、「入居者が自分で購入して取り付けたもの」である場合は、その所有権は入居者にあるため、修理や交換の責任と費用も、当然ながら全額「入居者の自己負担」となります。故障を発見したら、まず取るべき行動は、自己判断でメーカーや修理業者に連絡するのではなく、「管理会社または大家さんへの報告」です。連絡を受けた大家さん側が、修理を手配するか、あるいは修理費用が高額になる場合は、新しい製品への交換を判断します。古いモデルの場合、すでにメーカーの修理用部品がなく、修理自体が不可能というケースも少なくありません。その場合も、同等クラスの代替品への交換費用は、大家さん負担となります。備え付けのウォシュレットは、あくまで「大家さんの所有物」であるという認識を持ち、トラブルの際は、勝手に行動せず、必ず貸主側の指示を仰ぐ。これが、賃貸物件における鉄則です。